「原稿は燃えない」~ブルガーコフの作家人生について


『巨匠とマルガリータ』の作者として知られるミハイル・ブルガーコフ(1891~1940)。
ブルガーコフは当時ロシア帝国支配下であったウクライナのキエフで、ロシア人の両親の間に生まれました。
キエフ大学で医学を学び、軍医として戦地に赴いていましたが、戦後作家へ転身します。

雑誌「ナカヌーニェ」に掲載された『悪魔物語』が高い評価を受けた後、戯曲『トゥルビン家の人々』がモスクワ芸術座で公演され、大成功を収めるなど、ブルガーコフは一躍人気作家となりました。
しかし当時は帝政、表現の自由が厳しく制限されます。
政府は科学による人類の目覚しい発展を目標としていましたが、ブルガーコフは『犬の心臓』などで科学への懐疑的な態度を示し、要注意人物と見なされます。
続いて、内戦時の体験をもとにした『白衛軍』でもその思想が問題視され、発禁とされてしまいます。
『トゥルビン家の人々』もやがて上映禁止になってしまいました。

今でこそ良く知られる名作『巨匠とマルガリータ』も彼の生きている間は発表されることはなく、死後四半世紀以上経ってからようやく発表されました。
『巨匠とマルガリータ』は1928年から12年間に渡って書かれた長編小説で、解禁後はまもなく注目を集めました。
彼はこの作品の中で、「原稿は燃えない」という有名な言葉を残しました。
沈黙を強いられても、「引き出しの中に書く」という姿勢で執筆を続けた彼自身の生涯が反映されているともいえます。

モスクワのブルガーコフの家博物館では、当時の公演ポスターなどが展示されています。
最上階の50号室は実際にブルガーコフが暮らしていた部屋で、この部屋のみ「ブルガーコフ博物館」として、有料の展示室になっています。
建物自体はブルガーコフ好きの集う文化センターという雰囲気で、夜遅くまで営業し、館内にはカフェなどがあります。

【ブルガーコフの家博物館】
住所:ボリシャヤ・サドーヴァヤ通り10
時間:13:00-23:00、金・土13:00-翌1:00
定休日:なし
公式HP:www.dombulgakova.ru(ロシア語)

【ブルガーコフ博物館(ブルガーコフの家博物館の最上階)】
時間:12:00-19:00、木14:00-21:00
定休日:月曜
料金:70P、学生30P
公式HP:www.bulgakovmuseum.ru(英語)



文化芸術を感じる 2大帝都への旅






ロシアエクスプレス
ロシアエクスプレス

  • ロシア
  • モスクワ
  • ブルガーコフ
  • ブルガーコフの家博物館
  • 巨匠とマルガリータ