トレチャコフ美術館で出会うロシア美術の傑作


トレチャコフ美術館は、古今に渡るロシア美術のコレクションで知られ、西洋美術中心のエルミタージュ美術館と並ぶ存在です。収蔵作品は約10万点、見逃せないロシアの傑作が揃っています。

重厚な雰囲気の本館には主に古典から19世紀までの、近代的な建物の新館には20世紀以降の作品が収められています。展示の入れ替えや企画展も多いので、目的の作品が常に限られるとは限りませんが、その代表作品を紹介します。

☆詩人プーシキンの肖像画(1827年:本館・部屋番号8 )
ロシア人が最も敬愛し、今も愛し続ける詩人といえばプーシキン。プーシキン自身もこの絵が大変気に入り、注文者である友人の死後、大切な聖遺物のようにこの絵を買い取りました。「まるで鏡の中の自分を見ているようだ」という言葉が残っています。モデルの外貌や服装、肩からゆったりと垂らしたスカーフが、詩人プーシキンの内なる魅力と理想的な詩人像が描かれています。

☆キリストの出現(1837~1857年:本館・部屋番号10)
高さ5m40cm、横7m50cmという壁一面に掲げられた巨大な作品。制作年数の長さが物語るように、画家イヴァ―ノフは一生をこの大作の製作に掲げました。絵の主題は聖書の中からの情景で、洗礼者ヨハネがヨルダン川で民衆を洗礼しているところにキリストが現れた場面となっています。彼がこの作品のために描いた600点以上もの下絵や油彩画の一部も美術館に展示されています。子細な部分までも画家の心血が注がれているのを感じます。

☆聖三位一体(1420年代:本館・部屋番号59)
ルブリョフは、古代ロシア最大の聖像画史です。彼の代表作がこの作品で、キリスト教による調和のとれた世界構造を表現しています。ロシアのイコンの最高傑作と高く評価されています。

☆黒の正方形(1915年:新館・部屋番号新館6)
アヴァンギャルド界に衝撃を巻き起こした傑作。芸術の本質を極限まで追求したマレーヴィチは、自らの芸術・哲学心情を「スプレマティズム(絶対主義)」と名付け、そのエッセンスをこの1枚の絵に凝縮させました。彼は展覧会でこの絵を通常イコンが掛けられる場所(つまりロシア人にとって最も聖なる場所)に配置しました。一方でこの正方形を「白い雲の上を歩く小学生の黒いランドセル」とイメージ豊かに語ったとも言われています。








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